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幻だった鍼灸治療臨床学の中国版を買う

鍼灸真髄には次のような文がある。

「鍼灸治療基礎学」と本書(沢田流聞書 鍼灸真髄)の関係は、前者が骨格なればこれは血液や神経に相当するものであって、次に続刊した「鍼灸治療臨床学」は、これが筋肉や内臓をなすものである。この三部の書により、沢田流治療の大要をお伝え出来ると思う。
(沢田流聞書 鍼灸真髄 代田文誌 より抜粋)


「鍼灸治療基礎学」の相棒となる「鍼灸治療臨床学」があることは知っていた。しかもこれは分冊で出版され、永らく絶版となっていた。ひょっとしたら、何処かの図書館で眠っているかもしれない。私も臨床学のうちの1冊は図書館で見つけ、読んだ。

 私は沢田流鍼灸術は、骨格を「鍼灸治療基礎学」口伝秘訣を収めた「沢田流聞書」を神経、血液となし、肉体については、堀越亀蔵、市石圭介(市石清代治)の「灸点治療法」に求めた。基礎学、聞書は学生一年生の時、灸点は卒業を控えた3年の時。

 それにトッピングとして「図説 深谷灸法」「家伝灸物語」「名家灸選釈義」など深谷灸の考え方を取り入れた。

 私の場合、我が家に伝わっている家伝灸は、深谷灸に大変よく似ていて、私の灸治療のベースは、家伝灸+深谷灸法にサブとして沢田流ともいえるが、沢田流をベースにして、トッピングで深谷とも言える。自分でもよくわからない。

 私が沢田流の本を手に入れたのは、鍼灸学生一年の時、あれから5年がたつ。家伝灸のたしなみを入れればもっと前からだが、プロ意識を持ってその技術を手に入れようとしたのは、5年前からである。

 5年の月日が経っているので、「鍼灸治療臨床学」が中国であるようだ、とわかってもそれほど興奮はしなかったのが正直な感想。

 中国書籍専門店「書虫」や「亜東書店」で中国語版鍼灸治療臨床学があるみたいだ、とわかったのは、昨年の秋以降。昨年の8月に出版されたらしい。(正確には50年以上前の本の復活ともいえる)しかし、すぐ買おうとは思わなかった。買ってみて、内容が基礎学だったら、酷い買い物とやり場の無い怒りがこみ上げてくるからである。

 中国の出版社学苑のホームページを探した。書籍の紹介文をグーグルの翻訳で読んだ。どうもこれは正真正銘の臨床学らしい。よし、2000円、買おう。買ってみようと決心がついたのは、本年の1月中旬。ところが、中国は旧正月が正月休みになり、その影響を受けて、届くのは、いつもより遅かった。1月のすえに手に入れた。

 日本で臨床学を買われる方のために、中国語名などここに記す

  針灸臨床治療学 日本漢方医学叢書 代田文志著/
胡武光編訳/付国英校訂/ 学苑出版社

針灸臨床治療学 日本漢方医学叢書 代田文志著/胡武光編訳/付国英校訂/ 学苑出版社

 
 日本語版と題が違うし、著者が代田文誌が代田文志になっている。書虫や亜東書店でも送料を入れて2000円前後だと思う。勿論、中国語版に臨床学の全ての巻が載っているのか?わからない。

 もの凄く冷めた眼で見てしまうので、沢田流ラブ?な人がこの文章を見て、やいと屋さん、いつもよりテンションが低いなあ、と感じられるだろう。

 ぱらぱらとめくる。沢田流特殊な取穴があり、まさに沢田流、沢田流らしさに、ヘンテコなもの買っちゃって、高い買い物にならなくてよかった、と少し安堵。

 しかし…沢田流鍼灸術の治療各論を収めたであろう本書。本書を読めば、タテマエ上は「基礎学」で経絡経穴の基礎力をつけ、「鍼灸真髄」で沢田流らしさを学び取り、「臨床学」で具体的に治療が出来る。臨床学を読めば、沢田流の治療が再現できる…ハズである。

 ここで思ったのは、この本を鍼灸学生時代に読んでいたら、沢田流を再現できただろうか?と思うと、再現は難しいと考える。

 基礎学と真髄を読んで、実は沢田流についていくつか疑問が湧いてきた。2年後に灸点治療法を手に入れ、それまでの謎が全て解けてしまった。学生時代に思っていた疑問が臨床学で解決できたかというと、逆に疑問が増えたのではないか?

 左陽池の使い方、施灸の順序、患者に取らせる姿勢など、これらの解釈が少し違うだけで、全く違う治療術になってしまう。

 誰もが知りたいであろう、治療の各論。各論が自分で使えるかという点で言えば、臨床学よりも、灸点治療法が凌ぐと思う。酷い見方をすれば、沢田の通い弟子だった代田、はじめは沢田のお友達から始まり、ついには弟子入り。弟子というより仕事仲間の感もあり、側近でもある堀越亀蔵。堀越の方が治療は上手かったのではないか?と考えてしまう。
(堀越は息子(清三)を代田に預けて弟子とさせている。二人の仲は良好だったのだろう。)

 僕には中国語版臨床学には2000円の価値しか見出せない。事前に内容を知っていて、4000円だったら買っていただろうか?内容を知らずに4000円で買っていたら損をした気分になったであろう。もの凄く辛らつな表現をとらざるを得ない。

 永らく、いや未だに日本では絶版の臨床学。(もっとも一部には代田文誌著作全集のような本もあり、完全に絶版とは言い切れない。)何故絶版だったのか?それだけの価値が無いから絶版だったのか?

 とはいえ、沢田流の本には、僕は愛着が湧いてくる。不思議な感情だ。今も枕元においているが、読みこなした時、評価ががらっと変わる可能性はある。何より「鍼灸治療臨床学」は、これが筋肉や内臓をなすものである。と著者に言わしめた、代田式沢田流三部作とも言って良い臨床学を手に入れたから、僕が使う沢田流に深みが出てくる可能性は高い。

 買ったイキサツと本を読んだ感想をサラッと書きましたが、正直お勧めはしません。ですが沢田三部作の最後の一冊、大きすぎる期待を持たなければ、揃える価値はあるハズ。

 下は僕の沢田三部作


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プロフィール

やいと屋 知足斎

Author:やいと屋 知足斎
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幼少の時より喘息などに苦しみ、健康雑誌、東洋医学の世界に入り込む。中学時は三国志の影響で中国の古典に興味を持つ
大学は法学部に進むが鍼灸の夢、捨てきれず近くに鍼灸新設校ができたきっかけで、三十路目前に入学
曾祖母が家伝灸の使い手で、その影響で灸の研究、研鑽を積む毎日
趣味は民俗学研究 だが今は鍼灸に専念する為に封印
家伝灸研究も最近は趣味になりつつある
1年次より中医学の勉強会に通い、3年次は経絡治療も学ぶ。
長野式また撃鍼(打鍼)法
積聚(しゃくじゅ)治療の研究も進めている

平成二十二年三月鍼灸師合格 四月 鍼灸師登録
やいと屋として奮闘中

ナード・アロマテラピー協会認定
アロマ・アドバイザー

キネシオテーピングトレーナー

覚王山鍼灸研究所 研究員

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