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澤田健の診断術(中編)

 次に付録から引用する。この一文は沢田の治療風景の描写としては、一番イメージしやすい。

 患者が来ると先づ仰臥せしめて腹を診る。さうして丹田の気をうかがふ。丹田の虚実を診ると治療方針が定まる。臍下腎間の動気は人の生命、十二経の原で、丹田に力が満ちて来れば如何なる病気もなほるという考えで、すべて治療の眼目は丹田に元気を満たすにあつた。それには三焦をととのえる要がある。そこで左陽池と中脘とに灸をすえる。なほ必要なれば水分や気海や大巨や滑肉門を使ふ。それから伏臥せしめる。先づ腎兪を診る。京門を診る。京門は腎の募穴だからこれを重要視した。腎の力の虚したるは補ひ、実したるは瀉したる。……

 沢田は不問診、観ただけでどこが悪いか?見破る達人であるが、腹診を重視したようである。まず、丹田(関元付近)の虚実を伺う。そして予後の判断はどのようにしたのであろうか?私は、左陽池と中脘の交互すえの時に、丹田を触って判断したのではないか?と思っている。
 つまり、左陽池と中脘を交互にすえながら、腹部に手を置き、下腹部に変化があるかで決めていたと思う。変化があれば、予後良好として腰に移る。変化が乏しい時、気海など腹部の灸を足したのではないだろうか?沢田の診断即治療、そして灸をどれだけすえるか?は左陽池と中脘の交互すえで決めていた、というのが私の現時点での結論である。これは、先ず丹田を探り、治療方針を決めるが、実際に灸をすえてみて、その変化に柔軟に対応していたのであろう。沢田はかなりの観察眼であったから、一壮一壮の変化も見て取ったのであろう。

 また、腎を瀉したとしているが、これはあまりあてにならない。この文章を書いた代田文誌は文筆家で、「補う」の対として、文章の綺麗さという点で、「実したるは瀉したる」と入れたのかもしれない。実際は、沢田は腎実もあるとしていた、という見方もあるし、代田の文章家として付け加えたものとも解釈できる。

 せっかくなので、無分流の記述を観てみよう。無分流は腹部だけで治療を行おうとした革新的な治療であるが、日本鍼灸、また湯液の腹診に大きな影響を与えた。今回は鍼灸重宝記より引用する。



 当流伝受の奥義
 抑 予が伝るところは本朝針家の祖、無分の末流なり、病の頭にあるも腹に刺し、病脚にあるも亦原に刺す。その刺すに次第あり、緒病まづ臍の下二寸、丹田の一穴を刺す。… 
「解説 鍼灸重宝記」より


 無分流はまず丹田に火曳きの鍼という軽い鍼をはじめに撃つのであるが、この手応えにより、予後を占ったという。丹田の虚実を診るのは沢田とよく似ている。違うのは、沢田は丹田を診断点としたのに対し、無分流はそこに第一鍼を撃ち、診断点であり、治療点としたことであろうか。無分流のように、手ごたえで病人の状態を診る、または沢田のように、左陽池と中脘を交互にすえ、丹田に手をすえていた(であろう)。どちらがよいかは、単純に比較できない。

 さて、よく身体は正直である、という論者がいるが果たしてそうだろうか?薬でも飲んでいたら、仮面の脈と呼ばれ、あまりあてにならないし、腹にしろ、脈にしろ、身体は正直に示してくれない。そこで治療家はいくつか、身体の正直な姿を見出す為の技術も持っている。


 腹あるいは頭に二,三本軽い鍼をします。穴は、百会、けんろ、中かん、気海、天枢などです。こうすると、不思議なように本証の脈がびしっと出てくるものです。 「鍼灸治療の真髄」 岡部素道

 しゃくじゅ治療でも、腹部、背部に軽い接触鍼をしてから、探るようなので、接触鍼は下準備だろうか?

 私は、無分流に習い、火曳きの鍼をあまり深く考えずに、治療のはじめに使っていた。それから脈を診ていた。これは、気を降ろす意味もあるから、間違いは少ない方法であったようである。
 さて、沢田流のやり方も、ひょっとしたら、左陽池と中脘で診断しやすくしていたのかもしれない。

続く
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No title

やいと屋さん、こんにちは。
沢田健の診断術、とてもおもしろく読ませていただきました。
沢田流を銘打った講座では、あまり聞けそうもないことが沢山書いてありました^^;

僕も不思議なのが、沢田流と言えば、基本穴と特効穴のことを平たく説明して、後は沢田先生の天才性を遠い目をして語る人の多さです。
それは沢田先生の治療法の副産物的なものであり、やいと屋さんがご指摘されている通り、丹田に主眼を置いた身体観やその体表観察術こそ、本来伝承されるべきものでしょう。

沢田流がそのように解釈されやすいのは、沢田先生の没後、代田先生が沢田流の科学化に力を注がれたことと、関係があるように思うのです。
ただ、このように書くと代田先生の悪口に聞こえてしまうのですが、そうではなく(昭和の初期には鍼灸の科学化は今以上に必要不可欠なものだったと思われます)、単に沢田流と科学とは相性が悪いように思います。そもそも経穴が動く時点で、再現性に乏しいですし。
でも、世間的には、このツボはこれこれに効く、といういわゆる穴性学的なもののほうが受け入れられやすいんですね。科学至上主義の現代ではなおのことかもしれません。

話をもとに戻しますが、そもそも沢田流は科学的手法に基づいて編み出されたものではないし、丹田を中心とした身体観や施術者の体表観察術が無ければ、それは「形だけ沢田流」ではありますまいか、と思う次第であります。
やいと屋さんのブログを読んでいて、達人の知識を披歴してお終いにするのではなく、その技を身につけるのに何が必要かを探し続けようとしている、その姿勢に共鳴せずにはいられないのです。
勝手に共鳴されては困る、と思うかもしれませんが、今後ともご指導よろしくお願いします。

キムタロウ

Re: No title

最近、沢田流合谷がダイエットに良い、というネット文章見て、沢田健はこの治療穴をダイエットに良いってどこかで言った?と一人ツッコミ。ただ、こういう表現に以外に真実があったりして。

このツボは○○に効くという表現は、しょうがないと思うのですが、その前に前提条件として、こういう症状、こういう所見、こういった脈の時、このツボが効く、というよりも効いたことがある、つまり、診断所見が今はまったく無いのです。よく診断即治療が東洋医学の真髄といいますが、肝心の診断術が抜け落ちている。

風邪には葛根湯が効く、といいますが、じゃあ、どんな風邪にも葛根湯が効くの?と言いたいです。

最近、診断即治療という言葉で、皆が病証を研究しなくなっている、そこで病証学が必要と言われる事がありますが、病証学以前に、診断術が無いのが現状では無いでしょうか?

鍼灸の科学化、代田文誌先生は沢田健の門下生になってしばらくして、石川太刀雄博士の解剖学教室に入りますが、鍼灸治療基礎学の年表を見ると、沢田健病没後に科学化に向かったというより、門下生時代から科学化を考えていたのではないでしょうか?しかし、皮肉なことに、代田先生の代表作は「鍼灸真髄」「鍼灸治療基礎学」特に基礎学は経絡経穴の本で、基礎学は代田先生の代表作といって良いでしょう。鍼灸の科学化の対極にある、科学で未だに説明が出来ない経絡経穴の専門書が代表作とは、皮肉であり、代田先生の限界でもあり、鍼灸の限界とも考えております。

「灸点治療法」では、解剖だけで東洋医学がわかるわけ無いじゃん?って暗に書いてあります。

鍼灸の科学化の限界を本間祥白先生が「経絡治療講話」で書いています。

僕は代田先生の心意気は評価しますが、無理だったんではないか?それでも、代田先生のそんな面も含めて好きだったりします。

沢田健の診断術は、「鍼灸真髄」の後書きで弟子が思い思いに書いている部分から拾ってきて書いています。案外、そちらの方が、沢田健が生き生きしていて、沢田流が見えてきます。助手になった人とか、お友達とか。そこからヒントを見出したいのです。

沢田健の診断術の難しさは、沢田健が進化していて、早い時には、数日で、変わっていたのではないでしょうか?病没する寸前まで進化していたので、ここらでまとめよう、という気が起きなかったのではないか?そういう意味では、鍼灸治療基礎学は、書籍化していてくれた御陰で、後進は助かっております。

脈では太極はわからない、といいながら、この脈は葛根湯の証、といっていますので、なんだかんだいって、脈もそれなりにわかっていたのでしょう。

それと、よく沢田流基本穴が言われますが、じゃあ、どの順番で、どの姿勢ですればよいの?と質問して、明快に答えられる人が少ない気がする。そんな疑問からこのブログは生まれました。基本穴は知っているが、基本穴の使い方は知らないという人が多すぎるのではないか?

うんと、キムタロウさんがブログで丹田考を書かれていて、コメントで書くか?こちらで記事書いてトラックバックで飛ばすか?迷っていた書き物がありまして、その概略を書きますが、

このブログ、鍼灸沢田流ともう一つの看板「達人養成プログラム」で高岡英夫の「究極の身体」を取り上げております。この高岡方式では、丹田(高岡式では下丹田)を作るには、横隔膜を使った呼吸が必要であると、簡単に言うとそんな感じです。

話が飛んじゃいますが、呼吸器系疾患に使われる患門、四華の灸穴(張氏なら、至陽、筋宿 八椎の脇 別説が膈ゆ、胆ゆ)で、肺ゆとか風門じゃないんだ、と考えていたら、どうも横隔膜を考えていたんじゃないか?と仮説を立てました。で、鍼灸重宝記では、腹は、中かん、梁門、巨けつ、旧式期門を鍼で刺す指示が多い。これは腹側からキロク部を緩めて横隔膜で深い呼吸をさせる目的があるのではないか?

鍼灸重宝記では、まず丹田に刺し、その後、散鍼で(おそらく)キロク部を緩める。
僕は最近はキロク部を緩めて、関元付近に接触鍼で、丹田を認知させています。順番はどちらが良いか?今はわかりませんが。

横隔膜で大きく呼吸が出来れば、間接的ではあるが、丹田に気がおちるのではないか?

で、沢田流の記載も、納得いくんですよ。

左陽池、中かんで反応が悪い時(丹田に気が満ちない時)、四霊(滑肉門、大巨)を使う。卍に効かせるなら、期門付近も緩む。
又は五柱の灸(中かん、梁門、巨けつ、下かん)を使う理由(呼吸器系疾患に使っています)も、横隔膜をちゃんと働かせる為とすれば、説明つくんですよ。

僕は呼吸器が弱いせいか?疲れてくると猫背なんですが(あまり良い話ではないですが)
背中ですと、膈ゆ以下の胃の六つ灸付近、腹なら期門とか巨けつがこわばるのです。

こういう人を整体などで強引に姿勢矯正とか、太極拳とかヨガで姿勢を変えるのもヨカですが、案外、先に鍼灸で緩めてからの方が、良いのではないか?(腰痛で無理な姿勢矯正では身体に悪い、腹や胸元、ツボ名なら水分付近が苦しくなると沢田健は書いていました)

そう考えると、鍼灸の身体への攻め方って、ドクターとか他のセラピストとは違った独自の即効性、効果の高い治療法が出来るのではないか?鍼灸の可能性を感じているのです。

こういう解釈って、理論理屈では出てこない、体表観察から生まれるよな?と最近考えているのです。(上手くまとまった)

じゃあ、体表観察といっても、むやみやたらにアルバイトとか、職場どこぞかで経験を積んでも見る眼が養われるか?というと、そうではなく、十四経発揮に基づく基礎が無いと無理なんじゃない?と思っておりまして、キムタロウさんの試みって、沢田健に近づく近道と考えているのです。

ブログ主はお互いに尊敬できないとコメント書けませんよ。そういう意味で、僕もキムタロウさんを尊敬しておりますよ。

「横隔膜と丹田」(仮)いつ書けるか?

No title

やいと屋さん、コメントありがとうございます。

沢田流の合谷がダイエットに良いというのは斬新です。
確か、身体の余り物を出すというお話があったので、デトックスのような感じでしょうか。

それよりも、「横隔膜と丹田」、とても刺激的なお話ですね。
読んでいて、思わずうなずいちゃいました。
これも、あまり他では聞けそうもない事なので、続きを楽しみに待っています。
沢田先生は脾腎の弱りで、病気のほとんどを説明されていますが、確かに横隔膜を意識していたのかもしれません。もちろん、これも意識していたというよりは、指がそう感じた結果、横隔膜の動きに関係する経穴に施灸していたことになるのかもしれませんが。

沢田先生の体表観察術を身につけるために、お灸塾で十四経を使って試行錯誤しています。
やいと屋さんの励ましのおかげで、これからも地道にがんばっていけそうです。

今回のやいと屋さんのコメントの一部を、お灸塾の塾生やお灸同好会の学生に紹介したいのですが、よろしいでしょうか。
やいと屋さんのブログから転載したことを説明し、プリント配布か僕のブログにアップできればと思っています。
丹田を考える上で、とても参考になると思いますので、差し支えなければよろしくお願いします。

キムタロウ

Re: No title

どうぞ、使ってください。コメントでも、記事本文でも。お役に立てれば何よりです。
使い手に使っていただくのが、鍼にしても文章にしても喜びます。

出来ましたら、感想か何か学生さんから出ましたら、教えてください。
今後、どのような考察が需要があるのか?見極めたいので。

では、お願い致します。<m(__)m>

No title

ありがとうございます。
では、またご報告させていただきます。

キムタロウ
プロフィール

やいと屋 知足斎

Author:やいと屋 知足斎
FC2ブログへようこそ!
幼少の時より喘息などに苦しみ、健康雑誌、東洋医学の世界に入り込む。中学時は三国志の影響で中国の古典に興味を持つ
大学は法学部に進むが鍼灸の夢、捨てきれず近くに鍼灸新設校ができたきっかけで、三十路目前に入学
曾祖母が家伝灸の使い手で、その影響で灸の研究、研鑽を積む毎日
趣味は民俗学研究 だが今は鍼灸に専念する為に封印
家伝灸研究も最近は趣味になりつつある
1年次より中医学の勉強会に通い、3年次は経絡治療も学ぶ。
長野式また撃鍼(打鍼)法
積聚(しゃくじゅ)治療の研究も進めている

平成二十二年三月鍼灸師合格 四月 鍼灸師登録
やいと屋として奮闘中

ナード・アロマテラピー協会認定
アロマ・アドバイザー

キネシオテーピングトレーナー

覚王山鍼灸研究所 研究員

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