スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

灸点治療法(按摩の心得)市石 喜代治 (中編)

左陽池の使い方で悩みました

左陽池の使い方は「鍼灸真髄」や「鍼灸治療基礎学」ではわかりませんでした。陽池は手の甲にあるツボですが、そこにお灸をするのでしょ?何を迷うの?と思われるのでしょうが、お灸をすえる時の患者の姿勢が重要になってくるのです。お灸は、すえられる姿勢で、効かせる方向を決める。例えば背中の「身柱」というツボ、座位でお灸をすえるのと、うつぶせに寝てすえられるのでは、効き方が違います。鍼は鍼の向きや手技で効かせる方向をある程度、決められますが、お灸はそうはいかない。座位(座った姿勢)で手の甲を上にして陽池にすえるのと、手掌を内側にしてすえるのでも、灸の響き方が違います。仰向けに寝て、腹を出して、手を胸に当てるのか?臍の辺りか?悩んだ時期があります。もっとも熱が浸透すれば、効く事は効くでしょうが。「鍼灸真髄」では次のような描写があります。

灸点をおろす順序は、背部、腹部、腰部、手、足、という風であった。後にはこれを改めて、腹部、腰部、背部、手足という風に変わった。「鍼灸真髄」より

この表記のまま解釈すると、左陽池は座位で施灸となりますが、晩年は、普通の手足と同じ扱いをしたのか?それとも左陽池だけは特別だったのか?今までわからなかったのですが、「灸点治療法」では僕の謎を解明する描写がありました。

陽池
手首の関節外側の中央の小穴、本穴は主として左手を使う。腹部中かんと交互にすえる。内臓諸機関に関連し、万病に特効がある。沢田流の秘伝とする。


秘伝という言葉に心ときめくものがあるのは僕だけでしょうか?

灸をすえる時の注意
施灸時の順序は、初めに仰臥の姿勢で腹部をすえ、次に伏臥して臀部、腰部及び背部の脾兪までをすえ、次いで背部、肩部、頚部、頭部をすえ、次に手、足をすえる。施灸の最初には必ず、中かんと左陽池を交互にすえる。


この後に僕が疑問に思っていた左陽池のすえる姿勢が書かれていますが、その引用はここでは書きません。1,2年悩んでいたものがこの一文で解決しました。それなりに色々な人に聞いて苦労しましたので、今の段階で、ここに公開する気にはなれません。

 沢田流の秘伝とも言うべき部分は本を買って(もしくは借りて)読んでください。

 お灸の順序は灸点の記載は沢田健晩年の型だと思われます。さらに、「鍼灸真髄」より詳しく書かれています。施灸の順序は(おそらく座位で)背部、肩、首、頭となっています。しかしながら、お灸で上に上がっていくのはいかがなものか?鍼なら安全策なのですが。
 といいますにも、お灸の順序、僕の頭の中では「上から下へ」という概念があったりします。順序を間違えるとお灸の熱が頭に上ってのぼせてしまいます。のぼせ、灸あたりを防ぐ為、上肢でお灸をした場合は、曲池、外関など、下肢なら、足三里、三陰交など四肢末端の要穴にお灸をすえて、治療の締めをします。(または最後に鍼で単刺術で刺し、気の抜け道を作っておく)深谷灸法では「止めの灸」と呼んだりしますが、
沢田流も、最後は曲池、足三里、太けいなどで終えますから、背部、肩、首、頭と上がっていっても、問題無いのか?それとも、沢田流が考えたより効かせる術なのか?安全策なのか?

 鍼灸重宝記などみますと、肩の大じょは禁灸穴、首の天柱、肩の肩井は禁鍼穴で肩から首は刺激量にきわめて気を配らなくてはならない、ツボがたくさんあります。刺激量を考えての熟慮とも思えまして、ちょっと気にかかる所です。意外と玄人好みの部分かもしれません。

蛇足ながら私のもの凄く少ない治療例(学生ですので家族などですが)肩や首、頭にお灸をすえるときは、外関、手三里、曲池から始め、刺激をならしておきます。



沢田流常用穴が違う
沢田流太極療法、基本常用穴は一般に言われているのは、 左陽池、中かん、気海、脾兪、腎兪、次りょう、身柱、肝兪、曲池、足三里、沢田流太けいが有名。
「鍼灸真髄」では他に肩の天りょう、血会の膈兪、沢田流京門(一般の志室)陽陵泉、三焦兪、膏肓などが使われている。「灸点治療法」では、気海の代わりに陰交、次りょうの代わりに上りょう、天りょうの代わりに肩外兪が使われている。気海と陰交は差が三分、次りょうは四対ある仙骨孔の2番目、上りょうは一番上の孔なので、それほどかわらないかもしれない。天りょうと肩外兪ももの凄く近い。

 代田文誌、と灸点の著者ではツボが違って見えたのかもしれない。

「鍼灸真髄」にはない治療穴として、他に水分、左肓兪が多用されている。腎の募穴は京門だが、一般に言われる志室の方が、腎の募穴に相応しいとして、沢田健は志室を沢田流京門として重視した。任脈上の水分、ヘソの脇五分の肓兪の2穴は共に腎の募穴として扱う人も多い。この2穴は沢田健が使っていたものか?それとも灸点の著者の創意工夫なのかわからないが、腎を重視する沢田流らしさとみる事もできる。
また左肓兪は腹部お血が左に反応として出る事が多い、と言われるので、腹部お血を意識したものともみれる。
因みに深谷灸法では下痢止めで腹部に治療穴を求める時、水分、肓兪、陰交とヘソを狭く挟む取穴をしている。だが、下痢が止まったら、水分と陰交は止める様、指示がある。深谷灸の理由が知りたくなった。沢田流ではその旨の指示はない。

 灸点では、ツボとして膏肓が多用されている。「鍼灸大成」の(崔氏)四華の穴では、膈兪、胆兪を以って四華とし、さらに膏肓が付け加えられている。灸を好む人にとって膏肓は愛用されるツボかもしれない。


「四霊の灸」の記載がない

「鍼灸真髄」では、ヘソから上の病が現れる司天の穴として滑肉門(沢田流では骨肉門)とへそ以下の病の現れる所、在泉の穴として大巨の二つのツボを「四霊の灸」として重視している。卍のように響くという。
「鍼灸真髄」では重視している記載があるが、真髄でも治療穴としては、この組み合わせは出てこない。灸点も同じく、滑肉門、大巨の組み合わせの治療はない。

 また、中かん、陽池、百会も重視されている記載があるが、治療法としては、百会はあまり出てこない。これは、真髄も灸点も同じである。さて腹部の陰と陽の境目はへそであって、へその脇に天枢という星座にちなんだツボがある。背中では、第七胸椎下の至陽であって、その脇に膈兪がある。
「鍼灸真髄」では病の通り道が記載されているが、こと背中では、これが当てはまると臨床歴の長い治療家が僕に話してくれた事がある。沢田健は、自由自在に反応をみて治療したと言われている。応用例として、四霊の灸を使ったのかもしれない。



「灸点治療法」にあって「鍼灸真髄」にないもの
灸点治療法は○○病にはこのようにお灸をすえる、と治療例が多数記載されている。この記載数は「鍼灸真髄」を凌ぐ。
「澤田流ならどのようにお灸をすえるのかな?」と澤田流の定石を見ることができる。定石の大切さは実は「鍼灸真髄」でも説かれているのです。略式ながら引用します。(本来なら実際に該当部分を読まれることをオススメします)


「沢田会」沢田健を囲んで弟子たちが思い思いのことを述べる懇談会のようなものです 

沢田流の型
鈴木、「そうですか。でも先生の流儀には一通りの型というものがある。それを教えるということは出来ると思う。」
代田、「そうですね。まあ、一年生のところですね。一年生の教え方と、大学生の教え方には大きなひらきがある。やはり一年生を教えるには、沢田流の型というものはこういうものだと教えることも必要だと思う。」

柳田(中略)(柳田氏は笛の先生が型を教えなかったことを喩えに出して、教えられるものだろうか?と少々否定的な意見を述べています)

沢田先生、「沢田流の定石というものは、無理に作ったものではなく、自然と生まれて来たものです。碁をやるのにも定石というものがある。定石をおいてやると、一番安全で、間違いがないです。池田君など、定石をいつもおいて、病のひとりでによくなるのを待っているというやり方で、一番楽な堅実なやり方です。」

柳田、「だが定石だけでは真の碁の名人ではない。… 」

最後の締めとして代田氏の話が書いてある。

代田、「まあ、定石をおぼえて、それから次の一目をおくことの工夫をするのですな。(中略)
やはり経絡をよくおぼえて活用することは大切で、その上沢田流の定石を一通りのみこむ、あとはおのおのの熱心で変通自在の妙を以って大事な一目をおけるようになるまで、工夫をつむことが大切だと思います。」(「鍼灸真髄」より抜粋)


「灸点治療法」では次のように書かれている。

あらゆる道に達する手始めには「型」がある。「型」もこなせぬようでは達人になり難い。特に最初に学ぶ「型」には周到な注意が含まれている。(中略)
初心者が剣聖の夢想剣をまねたとてなにになろう。所詮は型の百錬を経て、やがては型も破り、病に随い機に臨み、変に応ずるほか道はない。この本に盛るのも「型」にすぎない。しかし初めより「型」を破って成就は覚つかない。(「灸点治療法」より抜粋)


「灸点治療法」の型についての記述は、後半の「按摩の心得」の後に書かれてあり、全ての締めとして書かれている。初心者が沢田先生の真似してもダメだよ、と書かれているようなものである。

 「鍼灸真髄」で型の重要性について書かれているが、「鍼灸真髄」と「鍼灸治療基礎学」では、少々型のイメージが付かなかった、というのが僕の感想でした。
 もちろん「鍼灸治療基礎学」は治療家の骨格といえる部分の記載が多数あり、文字通り基礎といえるでしょう。ですが、治療例、こういう病気ではこういう感じで、治療しましょう、という記載はほとんど無いと考えました。ひょっとしたら絶版の「鍼灸治療臨床学」には書かれているかもしれません。その治療例を求める為、一年の時、「図説 深谷灸法」を読みました。
 深谷灸法では、ツボの位置、取穴の方法だけでなく、治療にもかなりページを割いております。私のお灸治療の基礎は「鍼灸真髄」「鍼灸治療基礎学」「図説 深谷灸法」で固めました。
今、三年の最後になって「灸点治療法」を手に取りましたが、1年の悩んだ時期に手に入れていたら…と少々残念な気持ちも出てきました。「灸点治療法」ではお灸の順番の記載まであり、泣けてくるほど心憎い所をついてきます。もっと早く読みたかった、というのがホンネですが、とりあえず、今、買えて良かったです。
(名古屋弁で言うと)「おみゃ~さん、お灸でけっこうなやんだがね、褒美に三年の最後にこの本をよみゃ~よ。」という天の沢田健先生のお導きでしょうか?(少々大げさですが)

沢田流の治療例として沢田流の「型」を見る事が出来るのは、この本の強みでしょう。また、治療例を見ることで、他の治療法と比較対照する事が出来る。例えば、喘息なら、沢田流では、こういう治療法を出している。深谷灸法ではこういうアプローチをしている。長野式ではこう、経絡治療の岡部素道は…と比較すると、いざ、喘息に対して、様々な引き出しを持っていることは強みになるのではないでしょうか?

もちろん、型を覚える為、一つの治療法、一人の師匠について学ぶことは大事です。ですが鍼灸学生が全て良い師に恵まれるとは限らない。本を読んで、偉大な先人たちの智慧を探るしかない人も多いでしょう。

ことお灸療法では「沢田流聞書 鍼灸真髄」「鍼灸治療基礎学」「灸点治療法」の三冊を買っても一万を超えません。私なら「図説 深谷灸法」も入れるでしょうが、四冊買っても1万とちょっとです。この程度の投資ともぐさと線香、練習用の板でお灸治療の基礎、もっといえば鍼灸治療の基礎を固める事が出来れば、随分安いものだと思うのです。

(四冊十分!!と今の僕では言い切れません。色々な鍼灸書が好きなもので、深谷灸法シリーズや岡部素道の「鍼灸治療の真髄」本間祥白「誰にもわかる 経絡治療講話」首藤傳明「経絡治療のすすめ」「超旋刺と臨床のツボ 鍼灸問わずがたり」また日本の江戸時代の古典、「鍼灸極秘抄」「鍼灸重宝記」「名家灸選釈義」「杉山真傳流 表の巻、中の巻」はたまた中医学も好きですから)
今、一年生にどのような本を読むと良いでしょう?と聞かれたら、上記の四冊を薦めます。特に「図説 深谷灸法」はツボの取り方が満載で、学校の授業でもツボで困ることはないでしょう。ただWHOの基準が変わり、深谷灸法と教科書のツボ、骨度法も違いますからその辺の違いは適当に濁します。 

続く 灸点治療法(按摩の心得)市石 喜代治 (後編)

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 看護
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

やいと屋 知足斎

Author:やいと屋 知足斎
FC2ブログへようこそ!
幼少の時より喘息などに苦しみ、健康雑誌、東洋医学の世界に入り込む。中学時は三国志の影響で中国の古典に興味を持つ
大学は法学部に進むが鍼灸の夢、捨てきれず近くに鍼灸新設校ができたきっかけで、三十路目前に入学
曾祖母が家伝灸の使い手で、その影響で灸の研究、研鑽を積む毎日
趣味は民俗学研究 だが今は鍼灸に専念する為に封印
家伝灸研究も最近は趣味になりつつある
1年次より中医学の勉強会に通い、3年次は経絡治療も学ぶ。
長野式また撃鍼(打鍼)法
積聚(しゃくじゅ)治療の研究も進めている

平成二十二年三月鍼灸師合格 四月 鍼灸師登録
やいと屋として奮闘中

ナード・アロマテラピー協会認定
アロマ・アドバイザー

キネシオテーピングトレーナー

覚王山鍼灸研究所 研究員

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

フリーエリア
QRコード
QRコード
オススメ
家庭でできる自然療法
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。